イタリアで美術のお仕事をするということ•苦労編<第二話>
さて、イタリアで美術の世界に飛び込んで,夢のようなお仕事と出会い無我夢中で数年が過ぎます。このラボラトリーでのお仕事は,現代美術というカテゴリーにありながら、仕事の形式はボス曰くルネッサンス様式。と言うのは、その昔ルネッサンスの文化が花開いた時代,芸術家というのはボッテーガと呼ばれる工房を持つマエストロに弟子入りし,大先輩の仕事を間近で見ることで技を会得したり,ある種の画風を持った有名な画家のもとで学んだりと,いわゆるお師匠とお弟子さんの関係のもとに育まれていたものでした。

なるほどセラミックという素材は確かに自分より技術と経験のある人から学んで会得するというプロセスが,成長に不可欠なものの一つで,お仕事をさせて貰いながら色々な技術も伝授してもらえるというのはこの上ない恵まれた環境と言えます。
しかも、伝統工芸から少し距離を置き,現代美術という私にとっては新しい分野で表現を模索するという作業はとても刺激的で、創るということにコンセプトを与える作業を通して、自分の価値観をアプローチする可能性が無限に広がったようで,毎日が新鮮な学びで溢れていました。
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そしてとても有り難かったのは、難しく責任ある仕事にもどんどん挑戦させて貰えたこと。
チームの団結が強くなると共に,自然と彼らの知名度もぐんぐんと伸び始め,初めて参加させてもらったボローニャやミラノの展覧会から、ベニスビエンナーレ,ニューヨークでの個展と年を追うごとに作品を発表する場の幅は広がり,私たちアシスタントもやりがいのある充実した日々を共に過ごすことで、だんだんと家族のような関係が形作られて行きました。
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...というとなんだか全てが順風満帆のハッピーな日々のようですが、きちんと大変なことも沢山ありました!笑
挙げるときりがありませんが、一番苦労したことの一つ,それはやっぱりアーティストと渡りあっていくこと。
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天才と○○は紙一重....なんて言いますが、彼らも,色々な意味でハチャメチャにクレイジーなところが...103.png
その一つのエピソードはこんな。


大きな展覧会を数週間後に控えて,大量の仕事,寝泊まりしながらの窯焚きなどでスタッフはみんなお疲れ気味。
ボスは思うように仕事が進まずイライラ,いくつもの作品を同時進行で制作していくので、疲労も手伝って何だか考えがまとまらない様。
私はボスのひとり,Pの大型の作品に二ヶ月ほど前から付きっきり。結構難題な作品だったが,粘り強くやったお陰で何とか形になりそうだ~!ホッ。
やっと組み立て段階まで行き,Pと共に1パーツずつ組み立てていくけれど、あれれ今日はすこぶるご機嫌斜めな様子...。そういえばさっきもう一人のボスFとなんか言い合ってたっけ。
さあでも考えている暇は無い,とにかく一つずつ完成させなきゃ!と黙々と作業していると、

P:(こわーい顔をして)この作品,もうやめる!..と言うか、壊す,ぶっ壊す!!(何か壊す道具を物色しに行く。)

私:(心の中で)おいおいおい,どれだけ苦労してこの作品形にしたと思ってんの?!

P:(ハンマーみたいなものを持ってきて)壊す~!!

私:待った待った!ちょっと何言ってるの?!自分だけが関わってきたふうに言わないでよ。私がどれだけの時間かけてやってきたと思ってるの?!

P:そんなの知らん!急にこの作品嫌になった!

私:...これ壊したらどの作品で埋め合わせするの?これを壊すって言うんだったら私の屍を越えて行ってよね。(アシストのブンザイだけれど言わずにはいられん!)ちょっと頭冷やして落ち着いて考えたら?

P:(ちょっと黙って)....分かった、考える。

.....とこんなやりとりが105.png
私も立場をわきまえず言ってしまったので、心臓バクバク,もしかしてクビ?!とかなりビクビクしながらPを見ていると..。

P:とりあえず壊さない。悪かった。止めてくれて助かった。
...と。

私は作品が守れたことも嬉しかったですが、ああ,アシストは,こういう時にもできるだけ冷静な判断をしなきゃいけないんだな~,作るだけじゃなくて精神的なサポートも持ちつ持たれつなんだな、と実感。...というかいくらイタリア人とでもこういうやりとりは普通あまりないよな、寿命は縮んだけれど貴重な体験かもしれない,とできるだけポジティブ思考で解釈することに...106.pngそれにしても急に白髪が...笑

こんな風に一筋縄ではいかないことも多々ありましたが、雨降って地固まる,色々なことを皆で乗り越える術も身に付けて行くことになります。
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なんだかんだ言って家族のように愛しいみんな。
さて次回は何を書きましょうか...。

では、また!







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by colline_raffaello | 2017-06-18 07:23
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