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豚さんと生きるディープなスローライフ@ウルビーノ
みなさんこんにちは。
長ーい冬休みをいただいていたブログですが(汗)、また今年ものんびりマルケで出会った魅力の数々を紹介してゆこうと思います。どうぞよろしくお付き合いくださいませ。
今日は、ウルビーノの近郊、ピエーヴェ・ディ・カーニャという小さな村で昔ながらの農法で家畜のための穀物を栽培し、安全な餌のみを食べ自然の中で放し飼いで育ったチンタ・セネーゼという品種の豚さんを養豚し、自家製のソーセージやサラミを生産しているノルチネリア(豚をさばく技術を持っている豚肉加工者のこと)のカルロさんとジージャさん夫妻をご紹介します。

ここマルケ州は中部イタリア。中部イタリアと言えばウンブリアやトスカーナなどと並び豚食文化が盛んな地域です。衛生環境が整っていなかった昔はクリスマスから1月にかけて各家庭で豚をつぶし、近所の方たちに手伝ってもらいながらサラミやソーセージ、生ハムを各家庭で加工し、痛みやすいものから食べ始めて、長持ちするものは1年の間に貧しい農民の少ない動物蛋白源として大切に食べられていました。

近年では衛生環境も整い、冷蔵庫の普及で暑い夏以外は年中豚を加工することが可能になりましたが、毎年1月ごろには田舎で半身になった豚がどこかの家に運ばれてくる様子はあちこちで見られます。
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ここカルロさんのファームは山間の広~い野原を囲い、豚さんたちは乳離れの時期以外は放し飼いで飼われています。馬や羊のごとく思い思いの草を食べながら走り回る豚さんたちの様子はすこぶる健康的。奥様のジージャさんは放し飼いにすることで野生の薬草などを豚は自由に食べ、丈夫で強い豚に育つのよ、と語ってくれました。あまりに広い囲いで見渡しても豚さんはゴマの点くらいの大きさにしか見えません。
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乳離れ中のチンタの仔豚たち。チンタ・セネーゼと言えばトスカーナが有名ですが、ここマルケでも原種の豚として中世から飼われていました。その証拠にマルケ州の画家たちはたびたびチンタを絵画のモチーフとして使っており、フレスコ画などにもたびたび登場するのを、私自身地元の美術館などで見る機会がありました。
普通の白い豚よりも生育期間が長く、普通の豚が9ヶ月ほどなのに比べ、チンタは2年半から大きなもので3年ほど育てるものもあるそうです。こうして乳離れが終わるまで柵の中で過ごすそうです。

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なだらかな丘に囲まれた2人の家。あいにくの雨模様でしたがしっとりとした空気が緑のにおいを引き立てていました。
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今日の見学のメインであった解体の工程を見せていただきます。豚はさばきやすくするために冷蔵庫で脂身を冷やして固くなったものを使います。
工房で解体の仕事をするカルロさんの様子。家族から習ったと言う豚の解体は彼が小さなころから解体の様子を日々の習慣として観察して得てきた勘と知識が手さばきの隅々に感じられました。
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うかがった日はイタリア風ソーセージ、サルシッチャを作る日。これはハム、これは生で、これは血が多めだからサラミに、これは・・と手際よくパーツに分け、サルシッチャ用に分けられたお肉に計った塩と胡椒をざっとふりかけ手で荒くもみます。それを機械で挽き、洗っておいた豚の腸にするすると詰めていきます。
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奥さんのジージャさんが仕上げをお手伝い。適度な長さのところでくるっとねじり、サルシッチャの形が完成していきます。生で食べるのならこのままジューと炭火で焼くのが一番、これを熟成させるとサルシッチャ・セッカといって小さなサラミのようになります。
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根を詰めて仕事をした後は皆でゆっくりランチ。暖炉の火が落ち着く居間で素敵にテーブルセットをしてくれました。
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今日は日本から来てくださっていたお客様のリクエストでマルケ州の郷土料理、ビンチス・グラッソ(マルケ風ラザーニャ)を振舞ってくれました。普通のラザーニャに比べて、中のソースに鳥をさばいた後の内臓類が入っているのが特徴。どんなに重たい1品なのかとどきどきしていましたが、実際に口に運ぶとデリケートで繊細なおいしさが口に広がってびっくり。いくらでも食べられました。(笑)
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こちらももちろんジージャさんお手製の天然酵母パン。もちろん小麦粉も自家栽培の麦を使っています。天然酵母の田舎風パンは焼きたては生地が落ち着いていないのでその日のうちには食べません。必ず前の日に焼いて生地も味も落ち着いたものを食卓に並べます。かみ締めるほどに麦の甘さがじんわりと感じられ、いつまでも食べていたいパンでした。
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こちらは今日解体した豚さんからのお肉のグリル。フライパンでジューとシンプルに焼いただけなのですが油の味といい香りと言い、贅沢としか言いようのないおいしさ。大切に育てられた豚さんだということが味からも伝わってきます。

こちらも南マルケ州の名物料理、オリーバ・アッラ・アスコラーナ。アスコリという地域の良質なオリーブを使った肉詰めのフライです。これはジージャさんの妹さんの得意料理で、この日のためにわざわざ用意してくださいました。ぽんぽんと口に運べ、おつまみ感覚の1品。オリーブのジューシーさとフライのパリッとした食感がいいコンビです。
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おいしい食卓を囲みながら彼らの自給自足の生活に関しての考えや食物連鎖に対する思い、先人の食文化への敬意などを熱く語ってくれました。トリノで開かれるスローフードの祭典、サローネ・デル・グストでもワークショップを依頼されるなど、地元でも本当に安全でおいしいものを探す消費者さんに人気のある彼らですが、彼らいわく、自分たちの日々の生活で僕たちの理想の形のファームを実現できるのが一番大事なこと。スローだとかそういう受け売りは僕たちにはあまり意味が無いんだ。と真摯に語ってくれました。

彼らの暮らしぶりに触れるべく、ここには地元人のほか、アメリカなど外国からも訪問者がたびたび訪れます。自然いっぱいのファームや解体を見学した後はジージャさんお手製のおいしいランチでテーブルを囲みながらお話を聞く。飾り気のまったくない田舎の親戚のうちを訪ねて、その季節季節の恵みをいただく、そんな気持ちにさせてくれる二人との時間。これからもたびたびお邪魔することになりそうです。


by colline_raffaello | 2015-02-20 09:07 | 食文化
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陶芸作家の傍らマルケ州の宝石・ウルビーノを中心にマルケ旅行のアテンド活動中!
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